「柔道」とは

「柔道」は日本伝統の武術である「柔術」を起源としながら、人の道を学べることに意義がある。

柔道の創始者嘉納治五郎師範は、「天神真楊流」「起倒流」という柔術を学んで、その教育的価値に着目されました。         嘉納師範は、幼い頃から柔術に親しんでいたわけではなく、師範の過ごした幼少期は幕末から明治維新の頃であり、武術より学問という風潮の時代であった。                     当時、嘉納師範は身体が小さく虚弱だったので、「強くなりたい」「柔術を習いたい」と思っていました、父親からは猛反対されていましたが、現在の東京大学へ入学してから柔術を習い始めることとなりました。                            柔術の修行を進めるうちに、「虚弱だった身体が強くなり強くなり」「癇癪気味だった気持ちが、平穏な心持ち」になっていくことを実感した嘉納師範は、「教育として最適ではないか」と考え、他の流派も研究して、「柔術」から「柔道」を創始されました。師範は、柔術 柔道について、以下のように記されています。      「自分の教え込もうとするものは、昔の柔術そのままではなく、遥かに深い意味を有し、広い目的を持ってするものである。柔術とは言うものの、実際根本となっている道があって、術はむしろその応用であるのだ。先師からこの名によって教えられた技術が基となって今日を成したのであるから、名までも全然変更するのも本意ではないと考え、柔の一字を残し、柔道としたものである」                

柔道の精神は、「精力善用」「自他共栄」の理念にある。

柔道は「人間形成の道」          

柔道の基本理念は、嘉納師範が提唱し確立しました。それは、柔道はいわゆる競技スポーツであると同時に、人間形成をする「道」であるということです。それが、「精力善用」「自他共栄」という柔道の精神に通じています。嘉納師範は「精力善用」「自他共栄」について、以下のように述べています

「柔道の根本儀は、精力の最善活用である。言い換えれば、善を目的として精力を最有効に最有効に働かせることである。それでは、善は何かというに、団体生活の存続発展を助けるものは善である。」                          「この団体生活または社会生活の存続発展は、相助相譲・自他共栄によって達成されるのあるから、相助相譲・自他共栄もまた善である。これが柔道の根本儀である。

 

 

「精力善用」

「人間形成の道」としての柔道の根本原理は、「目的を達成するために精神の力と身体の力をモットも有効に働かす」というこです。これを「精力の最善活用」といい、約言して「精力善用」といいます。                          「精力善用」はもともと柔道の技の研究、その極意から生まれた原理であり、相手に対して「心身の力を最もに有効に使用して」攻撃防御を施す、ということから生まれました。                                     嘉納師範は、この「精力善用」の原理は、柔道の技の研究や攻撃防御の場面だけでなく、人間の日常生活や社会生活全般に適用される普遍的な原理であると説かれました。このことにより、柔道の修行は、人間としての成長、人間形成に繋がる「道」となりました。

「自他共栄」    

「自他共栄」とは、「相助相譲・自他共栄」を略した言い方で、その意味は、「自己の栄えのみを目的とせず、助け合い、譲り合い、融和協調して、共に栄えることを目指す」ということです。                               柔道の技は相手との関係でなされるものであり、その稽古は相手があって成立します。相手は自分の技を高めてくれる大切な存在であり、互いに助け合い、感謝し敬意を払うべき存在です。礼法の意義もここにあります。柔道の修行において自分と相手は、「助け合い、譲り合い、融和協調して、共に栄えることを目指す」になります。

「精力善用」と「自他共栄」の関係

柔道の修行、すなわち「精力善用」は、柔道の稽古を通じて身体を鍛錬する段階、精神を修養する段階へと進み、最後に、社会生活全般に適用する段階へと進みます。    どの段階においても、「精力善用」「自他共栄」は不変であり、柔道修行の過程で、自らを律し、鍛え、創意工夫を凝らしながら、己の完成を図ろうとすることで、尊敬、礼節、友愛、忍耐、自信、挑戦などの精神が、培われることになります。       また、特に社会生活全般に適用する段階においては、「精力善用」の原理を適用しようとする目的が、善なるものであるかが重要になります。その判断基準は、「自他共栄」の原理に沿い、社会に貢献することであるかどうか、ということになります。


柔道修行の目的      

柔道修行の目的は、柔道の精神に基づいて修行に励み「己を完成し社会に貢献する」ことです。